サキ「耐えがたきバシントン」Ⅸ章 92回

レディ・ヴーラはあら探しをするように時間をかけながら、ヨールと彼の馬を見た。彼女の声には、からかいたそうな調子と物言いたげな調子が混ざっていた。

「あなた方はどちらも大切な存在だから、両方とも歓迎したいけど。でもジョワイユーズが受け入れてくれるかしら。だから、言葉で歓迎することにするわ。あなたがサー・エドワードを攻撃した件だけど、とても素晴らしいことだと思う。けれども当然のことながら、すべての言葉に賛成するわけにはいかない。サー・エドワードについて、ドイツの馬鹿がいるところに生け垣をつくって遠ざけようとしていると語ったのは、とても大事なことよ。だけど真面目な話、彼のことを内閣の中心人物だと考えているのだけど」。

「私もそう考えています」ヨールはいった。「不運が、彼のカンバスの骨組みをささえているのです。彼が多額の金を使ってしまう危険な存在であるのは、痛ましいまでの堅実さと正直さ故なのです。平均的な英国人であれば、ローアンの外交的な問題に関する処理の仕方について、世界と取引をしているオマールが神にたいして行う行為と同じようなものだと判断するでしょう。彼は好人物であって、もちろん、それはよいことではありますが」

レディ・ヴーラは冷淡な笑いをうかべた。「私の政党は権力をにぎっているから、私は楽観的になるという特権を行使しているけど。でも誰があなたに降参するのかしら?」彼女が話し続けているとき、黒髪をした肥満体質の男がひとり歩いて通り過ぎていった。「最近、彼をよく見かけるわ。一度か二度、私のダンスの相手になったこともある」

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