画廊は混みあい、これが客車内ならひどく憤るであろう超満員の状態にも、人々は陽気に耐えていた。玄関付近ではマーヴィン・ケントックがセレーヌ妃殿下に話しかけていた。妃殿下は、ひときわ目立つ有益な人生をおくられていて、「けっこうです」と言ってしまうような気だてのよさと、無能さの影響をうけている方だった。「あの方が、ご自分でやっているバザールの大半が、品物に欠いているのは明白だ」ふざけた口ぶりで、前閣僚がかつていったことがある。そのとき、彼女は気まぐれに後悔していた。
「悪意のない若い人たちの軍団だけど、芸術の課程で上達したご褒美に賞品をくばったばかりだから、画廊に顔をだすことはやめましょう。それというのも、いつも心に思い浮かべているのだけど、あの世で私がうける罰とは、誤った方向に続々とすすんでいく若者のたちのために、永久に鉛筆を削ったり、パレットをきれいにすることではないかしら。間違った信念をいだくように、故意に私がしむけたようなものですからね」