アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」2章20回

ほかの者たちは、知りたいという残酷な衝動にかられて、行き当たりばったりで、夜の催しに少しだけ首を突っ込んでみたりするのだが、それでいながら、嫌になるほど何の感情もいだかなかった。要するに、上品に着飾った、行儀のよい若者たちが、全知協会で幾晩も、無邪気に過ごすということなのだった。しかも、知的な冒険という心地よい幻想をともなうものだった。

 

べつの若者で、さらに幸運な境遇にある者たちは、教育でうわべをかざって、仕入れたばかりの知識を整理しない状態でやってきた。その若者たちは外国風の考え方を身につけていながら、世界の情勢や物事の関係については程よく無知で、そうした姿は伝道師たちと相通じるものがあった。彼らがイースト・エンドの危険にみちた深部に首をつっこんで、二週間にわたって、その苦界や野獣のような残忍さと闘おうとするなら、両親たちも心配しないではいられないだろう。そこで彼らは、商人たちの息子や売り子たちのあいだに入ることにした。ほんの僅かの寄付でもすれば、そうした売り子たちは目をつぶってくれるからだ。おかげで安心してイースト・エンドを訪れることができたのだが、はたして自分たちの印象はどんなものだろうかと不安におもい、どのようにして印象をのこしたのだろうかと考えた。だが、暗黒地帯での身の安全を心配する人々のところに戻ってくると、知識をひけらかしたり、知ったかぶりをしたりして、イ-スト・エンドの権威を気取った。彼らはこう報告した。「イースト・エンドは、かつて言われていたような場所ではない。ウエスト・エンドにも、もっとひどい場所があるだろう。人々も、それなりにまともである。もちろん驚くほど不作法者ではある。だが、きわめて清潔で、物静かだし、服装もこざっぱりとしていて、ネクタイもしめ、カラーもつけているし、時計もさげている」

 

Others, subject to savage fits of wanting-to-know, made short rushes at random evening classes, with intervals of disgusted apathy. Altogether, a number of decently-dressed and mannerly young men passed many evenings at the Pansophical Institute in harmless pleasures, and often with an agreeable illusion of intellectual advance.

Other young men, more fortunately circumstanced, with the educational varnish fresh and raw upon them, came from afar, equipped with a foreign mode of thought and a proper ignorance of the world and the proportions of things, as Missionaries. Not without some anxiety to their parents, they plunged into the perilous deeps of the East End, to struggle—for a fortnight—with its suffering and its brutishness. So they went among the tradesmen’s sons and the shopmen, who endured them as they endured the nominal subscription; and they came away with a certain relief, and with some misgiving as to what impression they had made, and what they had done to make it. But it was with knowledge and authority that they went back among those who had doubted their personal safety in the dark region. The East End, they reported, was nothing like what it was said to be. You could see much worse places up West. The people were quite a decent sort, in their way: shocking Bounders, of course; but quite clean and quiet, and very comfortably dressed, with ties and collars and watches.

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