並装から上製本への改装
27日(木)は手製本工房まるみず組の応用コースへ。
並装から上製本にする作業を黙々としながら、先生から色々本のこと、紙のことを教わる癒しの、そして学びのひととき。
まだページの端にしつこく残っているノリボンドの痕跡を、カッターの刃の頭でで根気強くゴリゴリ落とす。
ノリボンドの跡を綺麗に落としながら、色々先生にお話を伺う。

今作ろうと動きはじめたばかりの本のことも色々助言くださる。
「予算が許せば、中にカラーの挿絵を挟みたい」と言えば、
印刷会社に全ページカラー印刷を頼むか、
あるいは挿絵部分だけカラー印刷にして製本会社で貼り込んでもらう……ことも出来るとのこと。
具体的なコストは両方とも訊いて調べて下さるとのことで、大変有難い。

修理のレッスンに使えないかと93年前に江川書房から刊行された堀辰雄「ルウベンスの偽画」を見て頂く。
ボロボロになってしまっているけど、赤い部分は革だそうだ。
革は70年くらい経過すると中の油が抜けて、こういう状態になってしまうらしい。
でもスッキリした素敵なデザイン。

93年前、23歳の江川青年が奮闘して出版した「ルウベンスの偽画」
本文の前後に空白のページ、ギャルドブランシュを4ページずつはさんだり、伝統的な製本方法に忠実。
さらに本文をご覧になって先生は「本文の天地と右の余白が黄金比になっている」と教えて下さる。
そういえば、空白がたっぷりあるようでいて微妙にそのバランスが違う。
江川青年が意識的にこのバランスを変えていたと知る。

さらに先生は奥付の「精興社印刷」という文字をご覧になって、「やっぱり」と言われる。
なんと精興社は今でもあって、この美しい活版印刷の文字に近い精興社書体というフォントを使われているそう。
作家さんの憧れは「精興社で精興社書体で印刷、牧製本印刷(広辞苑の製本会社)で糸かがり製本」とも教えて頂く。
たしかに素敵だ!
その他、和紙の修復の世界では「千年もつ」というのが基準……和紙修復のことやら話して頂く。
なんだか日常から離れてとても癒された時間だった。