アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」14章98回

ラック・ローで、ジョシュ・ペローに出くわしたとき、彼は上着の裾に何かをしのばせ、家に向かうところだった。「やあ、ジョシュ」とスタート神父は声をかけ、ジョシュの肩をぽんと叩いた。彼がふりかえると、手をさしだした。

 ジョシュは、上着にしのばせた物を移動させながら、握手するよりはやく、ひとさし指をあわてて上にやって、帽子の先にさわった。にやりとした下品な笑いをうかべ、周囲に目をはしらせ、満足なかば、困惑なかばという表情をうかべた。こうした状況で、ジェイゴウの人々がみせる態度だった。これからスタート神父がかわそうとしているのが、親しみのこもった会話を一言か二言のつもりなのか、それとも気がついたことを隠しながら、時計や財布、飾りピンなどについて、破滅につながる質問をするつもりなのか分からないからだ。

「やあ、これはどうも、神父様」ジョシュは答え、愛想よくにこにこしたが、その笑みは教区司祭がさしのべてきた手のむこうにある壁にむけられていた。

「さて、今まで何をしていたのかい?」

「ああ、ちょっとした仕事ですよ、神父さま」いつでも、どこでも、ジェイゴウでは、答えは同じだった。

「いつものような、ちょっとした仕事でないと思いたいね、ジョシュ。どうかね?」スタート神父は微笑んで、まるで子どもを相手にするときのように、ジョシュのボタン穴を引っぱった。「キングズランド・ロードで、六月の休みの日に、若い紳士がおそわれたと聞いたが。なあ、ジョシュ?」

 ジョシュ・ペローはそわそわすると、まごつきながらにやりとした。怖ろしい顔をしてみせようとしたが、うまくいかなかった。そこで、もう一度にやりとした。六月から、彼はぶらぶらしているだけだったからだ。やがて彼は口をひらいた。「大丈夫さ、神父様。その紳士にそう言ってやればいいのさ」

 にやりとした笑いをうかべながら、まずは壁に視線をはしらせ、それから舗道の敷石に視線をおとし、それから通りに目をむけた。だが、けっして相手の顔はみなかった。

 「そういえば、ときどき何かいいものが、服のふくらみに入っていることがあるじゃないか、ジョシュ? わたしの目に見えるのは、時計のような気がするんだが? ちょっとした仕事を、他にもしているんじゃないかね?」

In Luck Row he came on Josh Perrott, making for home with something under the skirt of his coat ‘How d’ye do, Josh?’ said Father Sturt, clapping a hand on Josh’s shoulder, and offering it as Josh turned about.

Josh, with a shifting of the object under his coat, hastened to tap his cap-peak with his forefinger before shaking hands. He grinned broadly, and looked this way and that, with mingled gratification and embarrassment, as was the Jago way in such circumstances. Because one could never tell whether Father Sturt would exchange a mere friendly sentence or two, or, with concealed knowledge, put some disastrous question about a watch, or a purse, or a breast-pin, or what not.

‘Very well, thanks, Father,’ answered Josh, and grinned amiably at the wall beyond the vicar’s elbow.

‘And what have you been doing just lately?’

‘Oo—odd jobs, Father.’ Always the same answer, all over the Jago.

‘Not quite such odd jobs as usual, I hope, Josh, eh?’ Father Sturt smiled, and twitched Josh playfully by the button-hole as one might treat a child. ‘I once heard of a very odd job in the Kingsland Road that got a fine young man six months’ holiday. Eh, Josh?’

Josh Perrott wriggled and grinned sheepishly; tried to frown, failed, and grinned again. He had only been out a few weeks from that six moon. Presently he said:—’Awright, Father; you do rub it into a bloke, no mistake.’

The grin persisted as he looked first at the wall, then at the pavement, then down the street, but never in the parson’s face.

‘Ah, there’s a deal of good in a blister sometimes, isn’t there, Josh? What’s that I see—a clock? Not another odd job, eh?’

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