チェスタトン「マンアライヴ」一部一章2回

数多の母親がみすぼらしい裏庭で眺めていたのは、洗濯用ロープにつるされた、とても小さなシャツ五枚で、その様子は、やや辛いところのある悲劇を眺めるようであり、あたかも、自分の五人の子供たちをつるしてしまったかのようだった。そのとき風がふいてきた。そして風の勢いがあまりに強く、蹴りつけてきたものだから、まるで五人の、丸々とした小僧たちが、シャツに飛びこんだかのようになった。すると抑圧されてきた潜在意識の奥底で、母親がおぼろげに思いだしたのは、こうした事柄について、祖先が記した出来の悪い喜劇であったが、それは妖精がまだ人間の家に住んでいた頃の喜劇だった。数多の少女が気づかれることもなく、周囲に塀がめぐらされ湿り気をおびた庭で、ハンモックに身を放り出していたが、その他の人と交わろうとしたがらない有様ときたら、まるでテムズ河に身を投げた人のようであった。そのとき、例の風がふいてきて、木の塀をゆさぶって引き裂いたものだから、ハンモックが風に持ち上げられた。バレーのバロンのように宙に静止して、風が少女に見せたものとは、はるか向こうにある風変りな形をした雲であり、はるか下のほうで光り輝く村の映像であった。それは妖精の舟に乗りながら、天国をすすんでいくかのような光景であった。

 

Many a harassed mother in a mean backyard had looked at five dwarfish shirts on the clothes-line as at some small, sick tragedy; it was as if she had hanged her five children. The wind came, and they were full and kicking as if five fat imps had sprung into them; and far down in her oppressed subconscious she half-remembered those coarse comedies of her fathers when the elves still dwelt in the homes of men. Many an unnoticed girl in a dank walled garden had tossed herself into the hammock with the same intolerant gesture with which she might have tossed herself into the Thames; and that wind rent the waving wall of woods and lifted the hammock like a balloon, and showed her shapes of quaint clouds far beyond, and pictures of bright villages far below, as if she rode heaven in a fairy boat.

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