「自分にそう厳しくなるものじゃない」イングルウッドはたしなめたが、その口調には不安を感じさせる苦悩がにじんでいた。「退屈なのは君のせいでもなければ、ウィスキーのせいでもない。ふつう人々は持ち合わせていないものなんだよ。つまり僕のような凡人は、と言いたいのだが。ぴったり同じ感情は持ち合わせていないんだ。そうした感情は、どちらかと言えば平凡なものであったり、うまくいかないものであったりするものだけれど。だが世界は、そう出来ている。まったくのところ生き残り戦だ。ある者たちは、ウォーナーのように、進歩を追いかけるように出来ている。いっぽうで、ある者たちは、僕のように沈黙を飾るように出来ている。自分の気質はどうすることもできない。僕よりも君のほうがずっと賢いよ。それでも君は、可哀想な文学野郎の、自由奔放な生き方を演じないではいられない。かたや僕は、つまらない科学野郎の疑念やら疑いやらを感じないではいられない。それは魚が空中を漂うことができないのと同じだ。シダが弧を描くのと同じだ。人間とは何か。ウォーナーが、あの講義で言っていたようなものだよ。人間とは動物の種族で、しかも異なる種族から成り立っているものだ。その動物とは、人間として見せかけられているものだ。」
“Don’t be so rough on yourself,” said Inglewood, in serious distress. “The dullness isn’t your fault or the whisky’s. Fellows who don’t— fellows like me I mean—have just the same feeling that it’s all rather flat and a failure. But the world’s made like that; it’s all survival. Some people are made to get on, like Warner; and some people are made to stick quiet, like me. You can’t help your temperament. I know you’re much cleverer than I am; but you can’t help having all the loose ways of a poor literary chap, and I can’t help having all the doubts and helplessness of a small scientific chap, any more than a fish can help floating or a fern can help curling up. Humanity, as Warner said so well in that lecture, really consists of quite different tribes of animals all disguised as men.”