チェスタトン「マンアライヴ」一部四章第115回

そうしたものがある様子は、なにかを象徴しているようでもあり、ほかから切り離され、愉悦の頂点にあるかのようであった。たしかに、目にはいるすべてのものが、不自然なくらいに鮮明に、ありありと見えていたが、それは全体の風景がくずれたからであった。

 幻想がはじまるよりも前に―幻想が終わったということは言うまでもない―、アーサーは前にすすんで、スミスの片腕をとった。それと同時に、背の低い、見知らぬ男も階段をかけあがり、もう片方の腕をとった。スミスは笑い声をひびかせ、あくまでも自らの意志で、ピストルをわたした。ムーンは医師に手を貸して立たせてから、その場を離れ、不機嫌な様子で庭の門によりかかった。娘たちは静かに、用心をおこたらず、まるで良家の子女が、混乱のさなかにいるかのようであった。だが、その顔から読みとれるのは、どういうわけだろうか、光が天から降り注いだばかりだということであった。

 

They existed, like symbols, in an ecstasy of separation. Indeed, every object grew more and more particular and precious because the whole picture was breaking up. Things look so bright just before they burst.

Long before his fancies had begun, let alone ceased, Arthur had stepped across and taken one of Smith’s arms. Simultaneously the little stranger had run up the steps and taken the other. Smith went into peals of laughter, and surrendered his pistol with perfect willingness. Moon raised the doctor to his feet, and then went and leaned sullenly on the garden gate. The girls were quiet and vigilant, as good women mostly are in instants of catastrophe, but their faces showed that, somehow or other, a light had been dashed out of the sky.

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