『にがい蜜』
著者:陳舜臣
初出:1969年「小説エース」
わくわくする小道具にあふれた作品である。
香港の秘密結社、
国民政府時代の北京高官の家に残された素晴らしい青磁の花瓶、
日系企業社長の息子を案内する若き香港女性、
社長息子と香港女性とのひととき、
秘密結社の儀式と乱闘、
これだけ小道具がそろっているのだから、最後まで楽しく読んだけれども、疑問もいくつか残る。
まず題が、すべてを語っているではないか? こういう題をつけてもいいものか…という疑問が一つ。
これだけ頭のまわる女性なら、青磁のある家に社長の息子を案内するまえに、花瓶の値段の目星をつけておくだろうに…という疑問も残る。
陳舜臣が「グリーンのタイル」とか「どこかへ車をパークさせて」と書いているのを読むと、カタカナが嫌いな私としては違和感が残ってがっかりしたような気になる。
香港女性も、これでは国の宝を守るために行動した…ということになるのでは?もう少し黒い笑いの利いたオチにしても…と思う。騙したのは日本人だけではなく、香港の同朋男性や愛国心も蹴とばすくらいの女性にしたほうが面白いのに。
読了日:2017年7月30日