隙間読書 木村二郎 「沈黙のメモリー 加州探偵事務所シリーズ」

「沈黙のメモリー 加州探偵事務所シリーズ」

 

著者:木村二郎
初出:1995年 月刊北國アクタス

著者の木村二郎氏は作家でもあり、翻訳家でもある。
今週末、向ヶ丘遊園専大サテライトキャンパスで、木村氏が訳した「怪盗ニック全仕事1」を課題本にした読書会に参加予定なので、木村氏の著作にどんなものがあるかと見ていて「沈黙のメモリー」を発見。
「空白のララバイ」を読んだのが、たしか6月。金沢の探偵事務所を舞台にした加州探偵事務所にすっかりハマった私には、第2弾「沈黙のメモリー」が出ていたのは嬉しい発見であった。読書会の課題本「怪盗ニック全仕事1」はとりあえず脇に置いておいて、さっそく「沈黙のメモリー」に読みふけった。
木村氏の書き方はとても読者に親切。この登場人物は誰だっけ…と記憶があやふやになるところで、親切に説明を繰り返してくれる。これは木村氏が翻訳をされていた影響なのだろうか。
今回、探偵の寺田、作家の益田、この二人の視点で話が進んでいく。さらに益田の子供時代の記憶もかぶさっていく。その凝った構成も楽しい。子供時代の不思議な記憶が狂気とかぶさっていくところも読ませるなあと思う。
そして何といっても大きな魅力は、舞台が金沢だということ。最近、月に一回は金沢に出かけている金沢フリークの私にとって、現代の金沢を描いた作品があるというのは嬉しい。先週、金沢の最高気温が36度のときも金沢にいたので、加州探偵事務所のある六枚町を訪ねようかとかなり思案した程である。結局は、歩いているうちに暑さに負けてたどり着けなかったが。
加州探偵事務所シリーズの楽しみは他にも。
事務所の女性社員、三代子がお茶に添えてだしてくれる金沢のお菓子も楽しみなのである。今回も「l村上の和菓子、わり氷」なるものが出てきたから、どんなお菓子だろうと思って調べたら、何とも涼やかで可愛いお菓子。
その他、越山甘清堂の若鮎(私は若鮎のお菓子が大好き)、これまた私の大好物の不室屋の草餡の麩饅頭…と大好きな金沢のスイーツの思い出にひたりつつ読み進め楽しさ。
東茶屋街の自由軒のオムライスとクリームコロッケも作品に出てきている。自由軒の前で入ろうか躊躇して止めたのだが、次回は入って食してみなくては。
また三代子が話題にあげるミステリー作品も、エルモア・レナードとかハメット「ガラスの鍵」とか、これからミステリーを読もうと思うミステリビギナーの私の心をくすぐる。
たしかに最後のほうで作者が三代子に言わせているが、「でも、巻田三蔵って、そんなに女性に好かれるほどいい男なのかしら?」という点が、この作品の弱い点なのかもしれないが。
金沢を舞台にした加州探偵事務所シリーズ、今後もどんどんよめるといいな…と願う。
でも、そろそろ「怪盗ニックの全仕事1」に戻らなくては。

読了日;2017年8月12日

 

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