『スタア来臨』
著者:エイクマン
初出: Powers of Darkness, 1966年
奥の部屋 筑摩書房
ある小さな町に往年の大女優ミス・ロウクビーが招かれ、鉛や黒鉛について資料整理をしている演劇好きでもないコーヴァンは知り合いになる。
ミス・ロウクビーと共にコーヴァンが目にする不思議の数々…読んでも意味は分からないながら、不思議さにつつまれて幸せな気持ちになってくる。
ミス・ロウクビーの贔屓筋スパーバスはホテル到着後、姿を消す。重かったはずのスーツケースは軽くなり、中から羽音が聞こえる。
コーヴァンの部屋を見たミス・ロウクビーは何に怯えていたのか?コーヴァンが開いていた『黒鉛とその使用方法』という本のせいだろうか?
ミス・ロウクビーが黒鉛の坑道に連れていってくれと頼んだのはなぜか?
本当の私は連れのミュラという娘、ミュラこそ私の個性だというミス・ロウクビーの話はどういうことなのか?
ミス・ロウクビーが舞台に立っているときに、そのミュラがホテルの火災で焼け死んだのは?舞台にむかって投げられた紫色のリボンがついた月桂樹は、ミュラの、それともミス・ロウクビーの死を悼むものか?スパーバスが投げたのだろうか?
次から次にわいてくる疑問そのものが、この作品から流れてくる気配のよう…不思議さを堪能した。
読了日:2017年12月5日