「幻想秘湯巡り」
作者:南條竹則
惑星と口笛ブックス 2017年8月30日
温泉を語りながらも、温泉に由縁のある文学作品は日本に少なくないと岡本綺堂「修善寺物語」、宮沢賢治、鏡花「みさご鮨」「眉かくしの霊」「湯女の魂」「山海評判記」など温泉地と繋がりのある本の魅力を存分に伝えてくれる。頁を繰るうちにまるで温泉宿で寝ころんで、のんびり読書をしているような気分になってくる本。
でも、のんびりした気分でいるところに、温泉には霊もやってきて湯あみもするからとこわーい怪談話も随所に。これが何とも怖い。読んでいるうちに湯気のむこうに人影が見えてくるような気がしてくる。
のんびりしたり、ぞっとしたり…温泉が恋しくなる本である。
ひとつだけ不満を言えば、作者は東鳴子温泉の田中温泉(廃業)がかなり好きだと何処に書かれていた記憶がある。私も幽鬼ただよう田中温泉のファンだった。だから田中温泉についても、あの雰囲気を文に残して頂けたら…と思う。
読了日 2018年2月6日