それでも私は彼の邪気のなさに耐えながら、なぜあなたは正しいのかと、あなたの国の方々が正しいと考えるのかと訊いてみました。
すると彼はこたえました。「ぼくたちが正しいのは、支配されるべき地で支配され、自由であるべき地で自由であるからだ。ぼくたちが正しいのは法を、習慣を疑い、破壊するからだ。でも、そうしたものを破壊する権利があるのかということについては疑いはしない。それというのも、あなた方は慣習にしたがって生きているが、ぼくたちは教義にしたがって生きているからだ。ぼくを見てごらん。国では、ぼくは『スミップ』と呼ばれている。国を去って、名前も完全さを損なわれたままなのは、ぼくが世界中をまわって、自分が持っていたものを探しているからなんだ。君が木々のように不動の存在でいるのは、君が信じていないからだよ。ぼくが嵐のように激しく動き回るのは、ぼくが信じているからなんだよ。ぼくは自分の家を信じている。だから、その家をもう一度見つけてみせる。やがて緑の街灯も、赤の郵便箱もとうとう見つけるだろう」
私は彼に言いました。「やがてすばらしい知恵も…」
でも私がその言葉を言いましたときに、かれは恐ろしい叫びをあげながら飛び出していき、木々のあいだに消えてしまいました。この男をふたたび見たことはありませんし、他の男を見たこともありません。賢明さという美徳は、上質の真鍮、すなわち凄まじい騒音と紙一重だと学んだように思います。
ウォン・ハイ
“And I, still enduring his harmlessness, asked him why he thought that he and his people were right.
“And he answered: `We are right because we are bound where men should be bound, and free where men should be free. We are right because we doubt and destroy laws and customs— but we do not doubt our own right to destroy them. For you live by customs, but we live by creeds. Behold me! In my country I am called Smip. My country is abandoned, my name is defiled, because I pursue around the world what really belongs to me. You are steadfast as the trees because you do not believe. I am as fickle as the tempest because I do believe. I do believe in my own house, which I shall find again. And at the last remaineth the green lantern and the red post.’
“I said to him: `At the last remaineth only wisdom.’
“But even as I said the word he uttered a horrible shout,
and rushing forward disappeared among the trees.
I have not seen this man again nor any other man.
The virtues of the wise are of fine brass.
“Wong-Hi.”