「死者の輪舞」につづく個性派刑事・海方刑事シリーズ二作目、そして悲しいことに、なぜか海方刑事シリーズは本作品が最終巻である。
「死者の輪舞」につづいて「毒薬の輪舞」も病院が舞台である。なぜ泡坂妻夫は病院という舞台を好んだのだろうか?
入院するまではまったく知らない者同士が同じ部屋となり、寝食を共にするなかで生まれる不思議な関係、しかも互いにどこか不調をかかえている……そんな環境に物語になる魅力を感じたのだろうか?
病院には毒薬も、メスも、凶器はそろっているし、人の出入りも激しいし、考えてみれば、ミステリの舞台としては面白い。
「毒薬の輪舞」の舞台は精神病院。そこに臍をなくしてしまった海方刑事が入院してくるという設定。入院患者も海方刑事と同じくらいに個性的。ただ精神科の入院患者のなかにいると、海方のアクの強さが薄らいでしまってやや残念な気が。
登場人物全員が個性的だと、個性が凡庸に見えてきて、だんだん登場人物が錯綜してくる。。
「毒薬の輪舞」というタイトルだけにカタカナの毒薬もたくさん出てくるし……
そのようなわけで目くらましに見事ひっかかり、最後の展開に思いもよらぬ驚きを感じた。ただ物語でも、犠牲者がああいう人物であるのは好きではないけれど。
泡坂氏には、医療ミステリではない、こうした笑いと温かみのある病院ミステリをもっと、もっと書いてもらいたかった。
それにしても病院ミステリを書こうと思ったきっかけは何だろうか? ご自身の入院体験なのだろうか……来月、ご遺族を招いての読書会でお話を伺うことが楽しみである。
2019/02/09読了