再訳 サキ「耐えがたきバシントン」№10

彼女の兄ヘンリーの、座って小さなクレソンのサンドイッチを食べる真面目くさった有様は、戒律を記した大昔の聖書がそうせよと命じたかのようであるが、運命はあからさまに彼女に親切であった。もしかしたらヘンリーは、どこかの可愛いけれど、経済的には困窮していてるような取り柄のない女とあっさり結婚してしまい、ノッチング・ヒル・ゲート界隈に住んでいたかもしれなかった。そして父親となって、血色が悪くて、賢いけれど役に立たない子供たちが長い数珠となってまとわりついていたかもしれなかった――子供たちは次から次へと誕生日をむかえ、葡萄瘡をうつすような類の病にかかっていたかもしれない。あるいはサウス・ケンジントン風のやり方で馬鹿げたものを描いてはクリスマスプレゼントとして贈ってきたかもしれないが、彼女の立方体の空間は無用の品々のための場で、置けるものにも限りがあった。

In her brother Henry, who sat eating small cress sandwiches as solemnly as though they had been ordained in some immemorial Book of Observances, fate had been undisguisedly kind to her.  He might so easily have married some pretty helpless little woman, and lived at Notting Hill Gate, and been the father of a long string of pale, clever useless children, who would have had birthdays and the sort of illnesses that one is expected to send grapes to, and who would have painted fatuous objects in a South Kensington manner as Christmas offerings to an aunt whose cubic space for lumber was limited. 

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