再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№53

「その娘と結婚しなさい」という助言が口からこぼれそうになったが、フランチェスカがその言葉をこらえ、塩漬けのアーモンドといっしょに呑みこんだのは、言葉にはときどき目的を台無しにしてしまうこともあるという事実をよく認識していたからだ。

「キャロラインはたぶんトビーのためか、甥の息子のひとりのためになんでしょうけど、彼女に目をつけたのね」彼女が口にしたのは、ついうっかりであった。「いくらかでもお金があれば、そういうときには役に立つものね」

コーマスは下唇をかんだが、そこに浮かんでいる喧嘩好きな表情こそは、彼女が見たいと望んでいたものであった。

“Marry her” was the advice which sprang to Francesca’s lips, but she choked it back with a salted almond, having a rare perception of the fact that words are sometimes given to us to defeat our purposes.

“Caroline has probably marked her down for Toby or one of the grand-nephews,” she said, carelessly; “a little money would be rather useful in that quarter, I imagine.”

Comus tucked in his underlip with just the shade of pugnacity that she wanted to see.

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