再訳 サキ『耐えがたきバシントン』№94

二人の青年のあいだには親しさがあるおかげで、同じ女性のご機嫌とりをしているという暗黙の状況から混乱が生じても耐えられないでもなかった。その友情は少なくとも趣味や考え方が同じことに由来しているものでもなければ、仲間意識でもなく、その友情のよりどころは互いに相手のことを面白く思い、興味をいだいているという事実にあった。ヨールにすれば、少なくともしばらくのあいだ、コーマスが劇場通いの、ならず者の役割を演じていたときは愉快で、面白い相手でもあり、エレーヌの好意をめぐる競争相手としても同じ感情を感じていた。コーマスとしては、ヨールと接触がなくなることは望んではいなかった。それと言うのも、ヨールにはいろいろと魅力があるのだが、なかでもコーマスの母親なら認めない天性という長所を持ち合わせているからだった。

The intimacy existing between the two young men had suffered no immediate dislocation from the circumstance that they were tacitly paying court to the same lady.  It was an intimacy founded not in the least on friendship or community of tastes and ideas, but owed its existence to the fact that each was amused and interested by the other.  Youghal found Comus, for the time being at any rate, just as amusing and interesting as a rival for Elaine’s favour as he had been in the rôle of scapegrace boy-about-Town; Comus for his part did not wish to lose touch with Youghal, who among other attractions possessed the recommendation of being under the ban of Comus’s mother. 

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