さりはま書房徒然日誌2023年7月31日(月)旧暦6月14日

丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻を読む

世に蔓延る嫌な風景を思うままに並べ、最後に「お盆前の雑草のごとくほとんど無制限にはびこっていった」と締めくくる。

嫌なことが書いてあるのに、思いも寄らない表現なので、どこか言葉を楽しみながら読むことができる。

突拍子もない言い方が最後に「お盆前の雑草」というドンピシャの、生活感にあふれる文で終結すると、「そうだなあ」と思わず納得する。

「おはぐろとんぼ夜話」は慣れるまでは読みにくいかもしれないが、慣れてしまうと詩のように次々とイメージが連なっていくのが楽しい。散文の醍醐味を感じる作品だと思う。

人生の舞台の中央に集光する

からかいの言葉にも似たどぎつい輝き……

肉体に縛りつけられていることが原因の

ひどく恥さらしな試練……

防潮林のごとき地味な役回りに甘んじている

心の安全弁の腐朽……

生き抜くためならなんでもござれの

度を越した善悪の逸脱……

結果的に魂を誤らせることになる

どこまでも欲望の流れに沿った放言……

そういったものが

お盆前の雑草のごとく

ほとんど無制限にはびこっていった…

(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻488頁)

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