丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻を読む
まるで山の仙人さまみたいに俗世から離れた視点で、鋭い語りを続ける屋形船「おはぐろとんぼ」……この語り口は記憶にあるが、はて誰なのやら?
不思議な屋形船おはぐろとんぼ……それは作者の丸山健二先生が投影された姿なのかも……と、以下の文に思った。
どう頑張ったところで
でしゃばりな性状を自制することができなくても
人間観察に関してだけはいささか自信を持っている
この私からすれば
(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻508頁)
これは丸山先生そのものだ。作者が船に姿をかりて語るとは……散文は面白い。