移りゆく日本語の風景ー蝶々ー
小学校の教室をのぞけば、かならずどこかに蝶々の絵があって、蝶々とは長い間私たちの生活で愛されてきたもの……と思い込んでいた。
だがジャパンナレッジ日本方言大辞典を見てみれば、そうではないらしい。以下、青字は日本方言大辞典より引用。
不思議なことに蝶(ちょう)はその美しい姿にもかかわらず、上代の日本人に好まれていなかったようである。不吉なものと考えられていたのか、文学作品にも採り上げられることがなかった。対して蜻蛉(とんぼ)は、古来日本人に愛されて、銅鐸の上にもその姿をとどめている。
かつて古代では、蝶は「かわびらこ」とも呼ばれていたようである。
日本国語大辞典を見てみれば、まったくない訳ではないが、たしかに蝶に不吉なものを感じていた気配がうかがえ、例文も非常に少ない。
*宇津保物語〔970~999頃〕藤原の君「我袖はやどとるむしもなかりしをあやしくてふのかよはざるらん」
日常見かけるものであっても、時代によってだいぶ感じ方は違うようである。