さりはま書房徒然日誌2023年8月17日(木)旧暦7月2日

丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」下巻を読むー屋形船おはぐろとんぼが語る自然の美しさー

オンボロ屋形船おはぐろとんぼが感じる自然の美しさ。

丸山先生が指導してくださるとき、その季節に咲く花は?とよく問われる様子が思い出される。

以下紫色の屋形船おはぐろとんぼが語る文は、じっと自然を観察してきた丸山先生ならではの文……だと思う。

私にはとてもタヌキの親子連れとか地蔵とか……文を書きながら浮かんでこない。

それから私は

土と石を交互に盛り上げただけの
従って
徒然川が放ってやまぬ情緒をいささかたりとも損ねていない
艶めかしい曲線を描き出す堤防すれすれのところをのろのろと下り

月影青く風さやかなる夜に
気持ちよさそうに空中を漂ってゆく死者の魂に思いを馳せて
どこまでもつづく桜並木に沿って進みながら

タヌキの親子連れの瞳の輝きや

不満らしい渋面を作っている野ざらしの地蔵や

ホタルのあまりにも静かなる乱舞や

みごとの一言に尽きる流星群の活動などに

ぼうっと見惚れている最中

(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」下巻337頁)

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