中原中也「別離」ーリフレインの美しさ、豊かさー
福島泰樹短歌絶叫コンサートでよく朗読される中原中也「別離」
福島先生の「別離」朗読を聞いていると、文字だけ追いかけて読んでいるときには浮かんでこなかった様々な景色が浮かんでくる。
それも毎回違う風景が見えてくるから不思議だ。
福島先生が語ることによって、リフレインの一つ一つに色の異なる情が宿り、「別離」の世界がその都度見え方の異なる万華鏡のように立体的に見えてくる。
特に「あなたはそんなにパラソルを振る」を語る時の福島先生の表情、身振り、声に込められた感情が毎回微妙に違うようで、その都度、別の場面が浮かんでくる。
「あなたはそんなにパラソルを振る」というフレーズがあるゆえに、思いが地上のドロドロした感情を遠く離れて、刹那の幻影を結ぶような気がする。
以下、中原中也「別離」より(1)を引用。
中原中也 別離
さよなら、さよなら!
いろいろお世話になりました
いろいろお世話になりましたねえ
いろいろお世話になりました
さよなら、さよなら!
こんなに良いお天気の日にお別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い
こんなに良いお天気の日に
さよなら、さよなら!
僕、午睡の夢から覚めてみると
みなさん家を空けておいでだつた
あの時を妙に思ひ出します
さよなら、さよなら!
そして明日の今頃は
長の年月見馴れてる
故郷の土をば見てゐるのです
さよなら、さよなら!
あなたはそんなにパラソルを振る
僕にはあんまり眩しいのです
あなたはそんなにパラソルを振る
さよなら、さよなら!
さよなら、さよなら!
福島先生の短歌絶叫コンサートは毎月10日に開催される。次回は9月10日(日)、3時開演、7時開演の2回。