さりはま書房徒然日誌2023年9月19日(火)

藤原龍一郎「歌集 202X」を少し読む

ー社会への大きな問いかけ、近未来或いは現在を語るSF的物語性に富んだ刺激的な歌にドキリとするー

2020年に刊行された歌集。

現代の日本の状況を糾弾し、読み手に大きく問いかける歌であふれている。

折にふれて頁をひらいては、鈍磨しがちな情けない己に喝を入れたくなる……そんな刺激的メッセージに富んだ歌集である。

短歌がこんなに社会に問いかけてくるものだとは……福島泰樹先生の歌にも、藤原龍一郎氏の歌にもメッセージ性の強さに驚く。

監視されている不気味さのある現代社会を詠んだ幾首かの歌、お洒落だけれど不気味さのある装丁(真田幸治)がとてもマッチしている。

ちなみに真田幸治氏が、こんなに不気味感のある装丁をされるとは思わなかった。でも不気味だけどセンスのいいところは、さすが真田幸治氏だと思う。

以下藤原龍一郎「202X」より引用
監視社会への懸念、問題意識がひしひしと伝わってくる。

夜は千の目をもち千の目に監視されて生き継ぐ昨日から今日 (11頁)

明日あらば明日とはいえど密告者街に潜みて潜みて溢れ (11頁)

詩歌書く行為といえど監視され肩越しにほら、大鴉が覗く (17頁)

スマホ操る君の行為はすでにしてビッグ・ブラザーに監視されている
(52頁)


反知性、思考停止の隷従の君はビッグ・ブラザーに愛されている (53頁)

上記引用の歌のなかでも、「肩越しにほら、大鴉が覗く」という結句の歌について……。

ポーの大鴉からくるイメージ性で心象風景が広がり、さらに「肩越しにほら」「覗く」で不気味さ、黒いユーモラスが際立つ。
「、」の句点で思わずドキリとする。
不気味だけれど物語性に富んだ歌だと思う。


この歌集については、まだ語りたいことは多々。それはそのうち後日に。

さりはま の紹介

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.