小豆洗はじめ「季節の階調 冬」を読む
ー詩人が言葉を紡いで詩集を編むことの素晴らしさを、詩人の言葉に出会えるPASSAGEという存在の魅力を思った一冊でしたー
小豆洗はじめさんの詩に出会ったのは、一棚一棚に棚主がいる神保町PASSAGE書店でのこと。
小豆洗はじめさんもPASSAGEの棚主の一人で詩集を中心に取り扱う棚を持たれている。
その棚の中でも小豆洗さんがご自分で編まれた小ぶりの詩集のシリーズが、ベージュの色といい、小ぶりの形といい、なんとも目をひく。
手にとってみれば、小豆洗さんは季節ごとに、テーマごとに詩を書かれ、ご自分でレイアウトやフォントまで細かく考えて詩集を作られている。
表現しつつ、詩集を制作するという小豆洗さんの創作姿勢も、詩人が自分の言葉を棚に置くことができ、ふらりと立ち寄った者がその言葉を持ち帰ることができるPASSAGEという存在も、共に素敵だなあと思う。
今回、購入した「季節の階調 冬」のフォントの色は空色で始まり、雪景色の写真の次のページから濃い青のフォントが続く。最後の「幻」「尺八の景色」「あとがきにかえて 川原のオリオン」で真っ黒なフォントに変わる。フォントの色の変化に、一日の雪景色の変化を見るような思いがした。
罪のない子供達が一方的に殺されてゆく悲しいニュースがあふれる世のせいか、「天使のパン」という詩が心に染みた。以下、「天使のパン」の冒頭より。
天使のパン
ときどき現れる
「天使のパン」という名の本屋で
手にした本は
まるで天使のようなこどもたちの心の
血肉となり栄養となって
かれらを支えつづけると聞く
(小豆洗はじめ「天使のパン」より)
小豆洗さんの見つめる世界は私も確かに見ている世界。でも詩人のレンズをとおして見ると、世界がまったく違って見えてくる。だから詩を手にすることは面白いと思う。
戻る過去は一定ではなく
そのたび新たな場所と時間を
はじめていることに
いつしか気がつくことだろう
(小豆洗はじめ「the day」より)
幻、という漢字を書くとき、いつも線を一本描き忘れているような気がして、頼りない。
(小豆洗はじめ「幻」より)
「季節の階調 冬」には「津軽三味線」「尺八の景色」と和楽器をテーマにした詩が二篇入っている。なぜかは分からないが、和楽器と冬はイメージが重なると思う。
そういえば、私にとって詩集を読むときの場所というものがすごく大事なのだが、「季節の階調 冬」は国立文楽劇場で開幕までのひとときや幕間のざわめきの中で読んだ。和楽器が近くにある場所で読むと、小豆洗さんの「季節の階調 冬」の言葉が浮かび上がってくるような気がした。
以下、神保町PASSAGE書店小豆洗はじめさんの棚のURLです。いろいろ詩の本やらご自分の詩集やらポストカードやらがありますよ。
https://passage.allreviews.jp/store/QY4PCVLSFTCSQ64XUZ3VPDXD