さりはま書房徒然日誌2023年12月1日(金)

丸山健二「トリカブトの花が咲く頃」下巻を少し読む

ー醜い人の世と自然の美しさのコントラストが鮮やか!ー

社会のあり方、人間のあり方について、丸山文学は手厳しいことを遠慮なく語る。
だが、そうしたものとは対極に位置する自然界を詩情豊かに、言葉を凝らして書く。
だから、いくら非難しても、決してスローガンにはならず、儚いものを言葉に刻む芸術としての美しさがある……以下、ラストに近い引用文にもそんなことを思う。


「巡りが原」の面……という引用部分に、先日の丸山塾での一コマを思い出す。私が無神経に「アブラナの上」と書いた箇所を、丸山先生は「菜花の面」と直された。「上」と「面」では、どうして喚起されるイメージがかくも違うのやら……ただただ不思議である。

月白は皓として輝き
 宵の明星が放つ金色はどこまでも清らかで

ほどなく
 雲ひとつなく
  しっとりとした夜が天空の堂宇をおおいつくす

つれなさをおぼえるほど深閑とした「巡りが原」の面には
 月の色をした霊気がゆるゆると立ち昇り

つまり
 心次第で在り方が決まってゆく生者の気配などはどこにもなく

多様多彩な有機体がひしめくあたり一帯には
 すり切れてゆくばかりの時間の断片や
  存在のちぐはぐな在り方や
   全能者の歯切れの悪い口調や
    幸運にみちた人生の儚さといったものを
     如実にあらわす蛍の光だけが
      不必要に数多く散見されるばかりだ

(丸山健二「トリカブトの花が咲く頃」453頁454頁)

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