さりはま書房徒然日誌2023年12月4日(月)

丸山健二「風死す」1を少し再読する

ー人間の意識と無意識の境界を書いているような二行だと思ったー

人間の意識というものを散文で表現すると、引用文のような状態になるのかもしれないと面白く読んだ。

「人間的な規範」を考えていくと、たしかに「際どい放物線」を描いてゼロに近づいていくのだろうか……という気がする。
「際どい」とは、どういうことなのだろうか?否定されたり、肯定されたり……という営みを指しているのだろうか?
「その先には無が広がり」という感覚も、とても頷ける、素敵な文だと思った。

昨日、昔からの丸山文学ファンが散文詩のような文体を敬遠して後期作品から離れている一方で、私の拙いブログを読んでくださっているお若い方のように、いきなり後期の丸山作品を真摯に読んでくださっている方もいる……と書いた。

その違いは……?と考えているうちに、昔からのファンの方は今よりストーリー性の強い初期作品に馴染んでいたり、あるいはバイクに乗ったり、船に乗ったり……そんな丸山先生の若い頃の生き方に憧れていたのだろうかという気もしてきた。

一方、いきなり後期丸山作品を真摯に読んでくださるお若い方は、丁寧に一語一句を読んでくださっている。さらに図書館で朗読活動もされている方だ……おそらく細かく作品をイメージしながら、言葉を楽しみながら、読むことを習慣にされている方なのだろう。

たぶん後期丸山作品を楽しむには、朗読の準備をするような心持ちで、ゆっくりと読むことが必要なのかもしれない。

引用した文も、この数行だけで満足がある世界ではないだろうか?

人間的な あまりに人間的な規範のあれこれが 際どい放物線を描きつつ
  哲学的妄念に包みこまれて落下の一途を辿り その先には無が広がり

(丸山健二「風死す」1巻46頁)

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