丸山健二「風死す」1巻を少し再読
ー言葉の連想ゲームでイメージを紡ぐ楽しみー
以下引用文は主人公の青年が次々と人を殺めたあと、しばらくしてから出てくる文である。
「種皮を被っての発芽にも似た心地を」という思いがけない語句の組み合わせが、頭の中でリフレインする。さらにそうした心が「淡い色と形の鉢に活けられた野の花が連想され」とは、どういうことなのだろうか……分からないからアレコレ思いをめぐらして楽しい。
突拍子もない表現だけれど、私の頭の中にスッと入ってくるのは「種子」「野の花」と植物つながりの語であるからなのかもしれない。
人知れず生命を輝かせるイメージが、流離う主人公と繋がっていく気がする。
「風死す」には、こういう言葉の連想ゲームみたいな楽しみ方もできるのではないだろうか?
あと先日の田畑書店のポケットアンソロジーもそうだけれど、丸山先生と関わった人たちが分からないような形でそっと作品の中に出てきている気がする。
なんかこれは私によく似ている……という人物の一文も、最後の巻にあった。
そんな隠された丸山先生の記憶のピースを探すのも楽しみ方の一つなのかもしれない。
今となっては 固唾を飲むほど素晴らしい 胸が躍る光景を目の当たりにしたところで
理知的な渇きがすっと癒されることがなくても種皮を被っての発芽にも似た心地を
のべつ自覚することが可能で 淡い色と形の鉢に活けられた野の花が連想され
(丸山健二「風死す」1巻95頁)