さりはま書房徒然日誌2023年12月19日(火)

丸山健二「風死す」1巻を少し再読

ー余韻の秘密を考えてみるー

たしか先日開催された「いぬわし書房」のオンラインサロンで、丸山先生は「読み終わったあと、引きずるもの、余韻を感じてもらいたいと思っている。数日間モヤモヤ、切なさが心に渦巻いて、そんな状況の分析を楽しむ読後感が残るように、想像力を喚起させる文章を書きたい」という趣旨のことを話されていたように思う。

たしかに以下引用箇所など、読んだとにいつまでも余韻が残る。なぜだろうとその魔法を考える。


菱形部分の半分くらいを引用させて頂いた。


語句のイメージの重なりによって、心の中で世界がどんどん広がっていく気がする。


たとえば「地」と「影法師」と「犯罪者」と「善と悪」というダークカラーのイメージ。

それから一転して「黄金分割」と「ヨイマチグサ」(夕方、黄色の花を開き、日の出頃には橙色になってしぼむ)と「夕べ」と「落日」というように、黄色から橙色のイメージで繋がる語句が並んでいる気がする。

陰から陽へのイメージの転換が、さりげなく配置された語によって無意識のうちに誘導され、そこから余韻が生まれるように思う。

なぜこんなに余韻が残るのか……考えてみて言葉の秘密を探し出すのも丸山文学の楽しさだと思う。きっと私が気がつかないでいる秘密がたくさんあると思う。

ちなみにこの菱形レイアウトの部分はページ数がない。何ヶ所もあるので、丸山先生、編集者さん、印刷所の方、それぞれが大変だったと思う。その甲斐あってレイアウトの美しさが際立っている。

           地
          面に映
         った俺の長
        い影法師 弱冠
       にして天下に名を馳
      せる犯罪者に憧れる奴は
     善と悪の黄金分割を象徴する
    ヨイマチグサの芳香が漂う夕べに
     落日の大観が 

(丸山健二「風死す」1巻) 

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