丸山健二「風死す」1巻を少し再読
ー余韻の秘密を考えてみるー
たしか先日開催された「いぬわし書房」のオンラインサロンで、丸山先生は「読み終わったあと、引きずるもの、余韻を感じてもらいたいと思っている。数日間モヤモヤ、切なさが心に渦巻いて、そんな状況の分析を楽しむ読後感が残るように、想像力を喚起させる文章を書きたい」という趣旨のことを話されていたように思う。
たしかに以下引用箇所など、読んだとにいつまでも余韻が残る。なぜだろうとその魔法を考える。
菱形部分の半分くらいを引用させて頂いた。
語句のイメージの重なりによって、心の中で世界がどんどん広がっていく気がする。
たとえば「地」と「影法師」と「犯罪者」と「善と悪」というダークカラーのイメージ。
それから一転して「黄金分割」と「ヨイマチグサ」(夕方、黄色の花を開き、日の出頃には橙色になってしぼむ)と「夕べ」と「落日」というように、黄色から橙色のイメージで繋がる語句が並んでいる気がする。
陰から陽へのイメージの転換が、さりげなく配置された語によって無意識のうちに誘導され、そこから余韻が生まれるように思う。
なぜこんなに余韻が残るのか……考えてみて言葉の秘密を探し出すのも丸山文学の楽しさだと思う。きっと私が気がつかないでいる秘密がたくさんあると思う。
ちなみにこの菱形レイアウトの部分はページ数がない。何ヶ所もあるので、丸山先生、編集者さん、印刷所の方、それぞれが大変だったと思う。その甲斐あってレイアウトの美しさが際立っている。
地
面に映
った俺の長
い影法師 弱冠
にして天下に名を馳
せる犯罪者に憧れる奴は
善と悪の黄金分割を象徴する
ヨイマチグサの芳香が漂う夕べに
落日の大観が
(丸山健二「風死す」1巻)