さりはま書房徒然日誌2023年12月21日(木)

丸山健二「風死す」1巻を少し再読する

ー文頭がほとんど漢字、文末がすべて平仮名の箇所もあって独特の視覚的リズムがあるような気がする!ー

以下引用箇所、突如記憶に現れた感じの二番目の段落のエピソードがやけに心に残る……なぜだろうと眺める。

まじまじと見つめていると、二段落目は、最初の文字が場面を語る行ではすべて漢字であることに気がつく。
「そうした場面が」だけが平仮名で始まっているので、場面の切り替えの合図のように思え、それまでのピアノのエピソードが鮮やかに浮かんでくる気がする。
行の終わりは、他の箇所もだが、ほとんどすべて平仮名である。

最初に読んだときは、こういうことは気にもならず気が付かずだったが、短歌の作り方を学んでようやく目が向くようになった……。短歌は、この文字を漢字にした場合、平仮名にした場合のイメージを考えてつくるものらしい。

一段落め、「鰐口」という言葉が強烈で〈絶望の覇者〉の風体を想像してしまう。


次の行で「無遠慮な通り名で呼ばれている もうひとつ別の分身は」とあるから、〈絶望の覇者〉とは主人公のことでもあるのだろうか……と考える。

「沈黙へと逃げこみ」のあと、行が空き、ピアノのエピソードが始まる。この空いた行が「沈黙」そのものに思える。
二段落めの脈略なく思えるエピソードは、無意識を漂う主人公の記憶の残像のようにも見えてこないだろうか?モノクロームに思えるイメージだが、その中で「真っ赤に充血した」という箇所が鮮やかに心に刺さる。

おもむろに鰐口を開こうとしている 〈絶望の覇者〉という
  無遠慮な通り名で呼ばれている もうひとつ別の分身は
    徹底的に究明すべき人間性の課題を投げ出したまま
      そのほうが得策と判断して 沈黙へと逃げこみ


      流木が引っ掛かった橋脚が崩壊するありさまを
        真っ赤に充血した目でそっと見やりながら
          古いピアノで難曲を巧みに弾きこなす
            盲目の乙女が独りで住む家の前に
              隣人らがわんさと押しかけて
                洪水の危険を報せながら
                  家具を外へ運び出す
                               そうした場面が
                                  突如として

                                     現れる。

(丸山健二「風死す」1巻168頁)

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