丸山健二「風死す」1巻を少し再読
ー感覚の断片が突き刺さる!ー
犯罪者にして詩人、がん患者という二十代の主人公。
「風死す」は「記憶の文学」という丸山先生の言葉のとおり、一見かけ離れたように思える状況でも、やはりそこには丸山先生が感じてきた感覚の、記憶の断片が散りばめられている気がしてならない。
そしてその痛みが、主人公の、丸山先生自身の核になっているのかも……とも思った。
同母兄の実在なんぞを夢想しながら孤独な身を癒し
(丸山健二「風死す」211頁)
「それが人の世の習いというものなのだから仕方がない」と
くり返し呟くことで 自我の最も繊細な一部分を傷つけ
そもそも生涯の始まりから心の歯車が狂い放しのせいで
常に加害者の立場に身を置いて生きるしか術がなく
(丸山健二「風死す」1巻216頁)