丸山健二「風死す」1巻を少し再読する
ー思考を目に見えるように表現すればー
人間の思考の営みを表現した面白い言葉だと心に残った。
「神の国とやらを探求し始め」とは、宗教的、哲学的思考に没入し始めたことを指しているのだろうか。
そうした見えない思考の過程を、形而上「認識できないもの。超自然的、理念的なもの」と形而下「認識できるもの。現象的世界に形をとって存在するもの」のあいだに「なんとも穏やかな段差を設け」と目に見えるように表現している。
読んでいる方も楽しみつつ、納得できてしまうところがすごいなと思った。
両の眼を涙で曇らせながらも 苦々しげな顔つきを保って 神の国とやらを探求し始め
形而上と形而下のあいだになんとも穏やかな段差を設けて 自由な往来を実現させ
(丸山健二「風死す」1巻224頁)