丸山健二「風死す」1巻を少し再読する
ーストレートに言わない、漢字のイメージを効かすって大事ー
引用文は詩人にして犯罪者、末期癌の20代を描いた箇所。
「野生種の堅果を想わせる目玉」という表現に、「どんぐり眼」とかストレートに言わない方が色々想像して楽しめると思ったり、「野生」「堅」という漢字が主人公のイメージを喚起して、次の「鋭い視線」にすんなり移行する気がしたりした。
それでもなお 野生種の堅果を想わせる目玉をぎょろつかせつつ 鋭い視線を飛ばして
取りとめもない愛おしさを覚えずにはいられぬ ありとあらゆる対象と物象を物色し
(丸山健二「風死す」1巻412頁)
丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ー月が語るからこそ納得ー
十月十八日の箇所は、「私は月だ」で始まる。
以下引用文。月が語る己の姿に、いつも夜空に浮かんでいる身近な存在でありながら、私達から遠いところを静々と進んでゆく……月の神秘性をあらためて意識する。
久遠の時の流れに沿って
どこまでも現世の縁を滑って行く私は
さかしらなきらめきを発する流れ星を牽制してやり、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」70頁)
そんな月が語る世一……。月が語るからこそ、ありのままを語る残酷さ、世一の他にはない個性……という二つが、矛盾せずにあるのだと思った。
将来において
一人前の体を持てるかどうか極めて疑わしい
この少年は、
私と他の星々を分け隔てなく扱って
区別もしなければ差別もせず、
さりとて
双方を同一視することもない。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」73頁)