さりはま書房徒然日誌2024年2月3日(土)

丸山健二「風死す」1巻を少し再読する

ー「詩」を語っているような言葉ー

以下引用文。
「魂の上澄みをすくって飲んだようなそんな思い」という箇所で、「魂の上澄み」ってどんな色、どんな味?と感覚に訴えてくるものがある。


「雨といっしょに舞い降りた 霊像のごとき雅な詩」という箇所、「雨といっしょに舞い降りた」という感覚が、詩人の主人公が詩を語るのにぴったりな表現だと心に残る。


「まろびゆく世界をかく在るべき姿に変えて」という表現も、 詩の働きをよく表しているように思う。


「銀灰調の光」も詩語のイメージだし、「心不在の嘆き」という語も一瞬どういうことだろうと考えたが、本来の詩は言葉が感情より先頭に立って紡いで行くものなのかも……と思った。

        こ
       う言っ
      てよければ
     魂の上澄みをす
    くって飲んだような
   そんな思いで 清廉な心
  地に浸ることができた 雨と
 いっしょに舞い降りた 霊像のご

  とき雅な詩が まろびゆく世
   界をかく在るべき姿に変
    えて 銀灰調の光が
     速やかに流れ去
      った 心不
       在の嘆
        き 


     (丸山健二「風死す」1巻)

丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む

ーボートにこれほど思いを込めるとは!ー

十月二十七日「私は交情だ」と始まる。
二人の老人の間に続く交情が、老人を、まほろ町の人々や風景、世一を語る。
そのなかでも、まほろ町の湖に浮かぶボートを語る文に、ありふれた存在にかくも見えないロマンと性格を感じるのだろうか……と作者の視線が心に残った。

湖上に浮動する物体は
   死者の魂を好んで運びたがるボートで
      かなり大胆な自己顕示欲であるにもかかわらず
         菊の花の鮮やかさに圧倒されて
            人々の目に止まることはない。


(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」109頁

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