さりはま書房徒然日誌2024年2月14日(水)

丸山健二「風死す」1を少し再読する

ー思いもよらないイメージ同士がピッタリハマる不思議さ!ー

目に見えないもの、嫌なものをこういう形で表現するか……と新鮮な驚きがある。いつまでもズルズルと引きずっている感じ、どこか権威的な滑稽なところがあるイメージがピッタリ自己嫌悪と重なって、すごく印象に残る。これから映画やテレビドラマで大名行列の場面を見るたびに、この文を思い出してしまいそうだ。

大名行列の供揃いに似た形で連なり行く自己嫌悪のあれとこれを
  すっぱりと断ち切ってから

(丸山健二「風死す」1巻512頁)

以下引用文。近づく死を語る主人公の言葉。「ぽっかり浮かび」「どうでもよく」「崩れ果て」「滅びてゆき」という言葉に、「死が差し迫って」いる感じがよく出ている気がした。遠くに何かを眺めながら、周囲が崩れてゆく……という感覚になるのかもしれない。

今さらおめおめと帰れぬあの郷里が
  薄明の夜の片隅にぽっかり浮かび

  未見の地と人はどうでもよく

    胸に宿る実在の魂が崩れ果て

      正義が永劫に滅びてゆき

        悪魔の代弁者と化し

          答弁は玉虫色で



          死が差し迫って
            肉の情念が
              弱まる。


(丸山健二「風死す」1巻512頁)

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