さりはま書房徒然日誌2024年2月17日(土)

丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む

ー作者が色濃く投影されている!ー

「私は野良犬だ」で始まる十一月五日は、「明日のことなど考えたこともない 典型的な野良犬」が世一を語る。

作者の理想とする姿が野良犬に投影されているようでもあり、また世一にも作者の想いを見るような気がする箇所である。

以下引用箇所。野良犬が語る自身の姿。「自由の大きさと深さ」という言葉は、自由を大事にしている丸山先生だからこそ、心から発する表現のように思えてならない。

わが自由の大きさと深さを心底から理解してくれているのは
   世一ただひとりでしかなく、

   少なくとも私の方は
      世一の自由の素晴らしさを充分過ぎるほどわかっているつもりだ。


(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」143頁) 

以下引用箇所。読み手が抱いていた不自由なところのある世一……という姿をくるりと回転させ、考えさせ始める表現である。

彼はまさに人間でありながら
   同時に人間以外のすべてでもあって


(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」144頁) 

以下引用は、この日の最後の部分。
「されど孤にあらず」は丸山先生のエッセイのタイトルだ。世一は、丸山先生自身と宣言する言葉のように思え、作者の世一への深い共感を感じてならない。

子供らしからぬ声で
   「されど孤にあらず」と
      そう言い放ったのだ。


(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」145頁) 

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