丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ーありふれた食べ物が多いのは?ー
十二月四日は「私は電気毛布だ」で始まる。瀕死の状態のオオルリが世一と一緒に電気毛布で温まる場面が微笑ましく書かれている。
丸山先生の作品には、食べ物を食べる場面が時々出てくる。その食べ物の中で多いのが「卵かけご飯」だったように思う。
以下引用文。
この場面では、世一が「夜食のジャムパン」を頬張る様が書かれている。食べ物を食べる様子にも、世一なら子供らしさが出ているようで、ありふれた食べ物にもその人らしさがでる気がする。
普通の、どちらかと言えば大変な境遇にあることの多い人物を書く丸山先生だから、食べ物もすごくありふれた物になるのだろうか……と思った。
世一とオオルリが交わす会話にも、両者の気取りのない、率直な間柄が伝わってくる。
四六時中付き纏う孤影をどうにか追い払った世一は
夜食のジャムパンを半分以上口の外へこぼしながら
むしゃむしゃと頬張り、
そうやって
寝食を共にする両者は
目と目を見交わしながら
打ち割った話をし、
おまえはおれに看取られて死ぬのだと
そんなことを少年が言うと、
オオルリは
寸分違わぬ言葉をそっくりそのまま返す。
そんなかれらは
丘にぶつかって砕け散る風の音と併せて
私の温もりに浸りながら
現世の過酷さから解き放たれるための眠りに就き、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」261ページ)