Smith: The Theory of Moral Sentiments | Library of Economics and Liberty.
1.1.11
死の危険にさらされるような災難のなかでも、理性がなくなるという災難は、感情の火花が飛び散らない凡人にすれば恐ろしいものである。それでも不幸が最後にどうなるのかを見つめ、他のひとよりも深い哀れみの言葉をかけたりする。だが不幸のどん底にいる筈の哀れなひとは、笑うこともあれば、おそらく歌うことだってあるだろう。きっと自身の悲惨さをまったく感じていないのだ。だから相手の様子をみて感じる苦痛とは、その不幸をうけている相手の感情を反映したものでない。不幸を目にして感じる同情とは、そうした不幸な状況に自分が落ちぶれたら、何を感じるのだろうかという思いから生じるものである。だがそれと同時に、理性と判断力を働かせ、相手の不幸を見つめるということは、おそらく不可能である。(さりはま訳)
(今まで訳したものについては、上のバーのアダム・スミス「道徳感情論」の部屋からお入りください。)