Smith: The Theory of Moral Sentiments | Library of Economics and Liberty.
1.1.10
だから共感する気持ちは、悲しんだり喜んだりという感情からは生まれない。むしろ、そうした感情をいだかせる状況から、共感は生まれてくるものである。時折ほかのひとのために怒りや悲しみを感じても、当の相手が、そうした感情を少しもいだいていないように思えることがある。それは相手の境遇に自分をおくとき、想像力のおかげで喜びや悲しみが私たちの胸にはやどる。だが現実から、相手の胸にやどる感情ではないせいである。他のひとが失礼なことをしたり不作法だったりすると、恥ずかしさで顔が赤くなることがある。だが肝心の相手には、その行動がよろしくないということがわかっていないように思えることがある。もし自分がそんな馬鹿げた行動をとれば、どんな混乱におちいるだろうかと、私たちは思わないではいられないからである。
(さりはま訳)
(今まで訳したものについては、上のバーのアダム・スミス「道徳感情論」の部屋からお入りください。)