丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ーゴミ袋が宇宙にも思えてくる不思議さー
十二月十四日は「私はゴミ袋だ」で始まる。
ゴミ袋という捨てられるだけの存在が、なんとも哲学的に美しく、そしてそのユーモラスな存在に思えてくる丸山先生の語り口である。
さながら宇宙のごとく膨張した私たちは
夜中に降りた霜に覆われて
うたかた湖の近くの空地にうずたかく積み上げられ、
そして
中身についてはお互いに触れないよう心掛け、
少しでも早く片付けられて
無へと帰せられるその時をひたすら願う。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」298ページ)
以下引用文。世一が登場して「見るも無惨な姿になった私たちを丹念に拾い集めて 丁寧に折り畳んでから そっと寄り添ってくれる」
そんな世一とカラスの言葉のないやり取りが続く。世一の優しさ、不思議な強さが感じられる箇所である。
残飯漁りに余念がないカラスどもはというと
生きるということはこういうことだとでも言わんばかりの
そんな視線を少年の方へ投げ
少年のほうでもまったく同じ意味を込めた眼差しを
数倍もの強さで投げ返す。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」301ページ)