丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を少し読む
ー虚無と不似合いな相手、虚無らしくない色が印象的ー
十二月十三日は「私は虚無だ」で始まる。
以下引用文。
虚無に取り憑かれる人が羅列され、その意外性も、リズミカルな並べ方も思わず考えてしまう。
さらに「私の餌食となる」という表現に、虚無が腕をのばしてくる姿が、見えない筈の姿が見えてくる不思議さがある。
さらに「黄金色の光をいっぱいに浴びた私」という虚無のイメージには似つかわしくない光景と色が美しく印象に残る。
「この世そのものを裁く権利を有しているかもしれない少年世一」という言葉に、丸山先生の怒りやら少年世一の不思議さやらを思ってしまった。
不用意に生きている者
幸福に慣れ親しんだ者
価値ある一時に潜心する者
常に先見ある行動を取れる者
存分に才腕を発揮できる者……
私の餌食となるのはそうした人々だ。
黄金色の光をいっぱいに浴びた私は
もしかするとこの世そのものを裁く権利を有しているかもしれない
少年世一と共に丘の坂道を下り、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結1」295ページ)