丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月十一日を読む
ー目には見えない幸運が伝わってくるー
一月十三日は「私は幸運だ」で始まる。
「愚鈍そのものの顔つきの これまで良いことも悪いこともしてこなかった高校生が 生まれて初めて自分の小遣いで買った しかもたった一枚の宝くじ」が、「百万の桁を超えていない」金額で当たった……という幸運が語る。
以下引用文。宝くじが当たった高校生へのまほろ町の人々の反応を、「温かい牛乳のように」と物に即して書いたり、金額も「百万を超えていない」と具体的に書くことで、だんだんその目には見えない幸運が伝わってくるようなところがある。
程良い金額は
私を健全な形で保ってくれ、
いくら生きても何ひとつとしていいことがない者たちを
落胆させることもなく、
温かい牛乳のように
かれらの胃袋にすんなりと納まった。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」19ページ)