丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月十八日を読む
ー書き手と読み手が共有できる色のイメージー
一月十八日は「私は敵意だ」で始まる。「鋼鉄製の反社会的な形状の扉」に向かってぶつけられようとした「敵意」が跳ね返され、そのまま置き去りにされたところで徘徊中の世一と出会う。
以下二つの引用文。色の使い方が印象に残る。意外と色は人によって喚起されるイメージが違うもの……と短歌をつくっていて思うようになった。
でもオオルリの羽のイメージと世一のピュアな心を表しているだろう「青々とした印象の少年」にしても、簡単に「白い」とは言わずに「雪と同じ色の吐息」と表現される白にしても、色からイメージを喚起しつつ、作者の思い描くイメージと読者の描くイメージにズレがないなあと思った。
ところが
その青々とした印象の少年は付け入る隙がまるでなく
胸のうちに潜りこめる余地もなく、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」41ページ)
だが憐れな病児は
雪と同じ色の息を吐き散らしながら
手と足をもつれさせるだけもつれさせ
却って寂しさを募らせるばかりの街灯を縫って進み、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」41ページ)