さりはま書房徒然日誌2024年5月10日(金)

丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月十九日を読む

ー見方を変えれば「檻」の意味も変わってくるー

一月十九日は「私は檻だ」とまほろ町営動物園の「人間とそうでない物の領域をきっちりと分け隔てる 頑丈この上ない檻」が語る。
檻の中の麒麟の様子を語る文に、キリンの動作やキリンといる時間が思い出されてくる。たしかにキリンなんだけれど、自分ではこう書けないのはなぜなのだろうとも思う。

舞台女優並みの大仰な瞬きを物憂げにつづけて
   ふざけきった形の口をもごもごさせながら
   
   おのれの身の上を決して悲観せず
      時間を時間とも思わずに
         ゆったりとくつろいでいる。


  (丸山健二「千日の瑠璃 終結2」42ページ)

キリン専用の檻。キリンという動物以外には意味のない檻だし、普通の価値観で考えたら「檻」なんて鬱陶しいものである。その常識を突き破って檻に憧れる世一に、今まで抱いていた価値観がひっくり返される不思議さを感じる。

だが少年世一だけは
   キリンではなく
      この私のことを主役と認めて
         多大な関心を払ってくれ、

         それだけに留まらず
            一度でいいから私の中へ入ってみたいと
               そう真剣に願っているのだ。


  (丸山健二「千日の瑠璃 終結2」44ページ)

以下引用文。キリンの檻に入りそうになっている世一を見つけた飼育係は背後から抱き止めながら、こう語る。
飼育係にとって檻は檻だし、病の世一の体もまた檻なのである。
何を檻と見なすかで生き方や価値観も変わってくる……と、そっと教えてくれているような気がした。

「それでなくてもおまえは病気に閉じこめられているんだぞ!」と
    そう言ったあと
       「その檻から生きて出られんぞ!」と怒鳴る。


  (丸山健二「千日の瑠璃 終結2」45ページ)

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