丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月二十三日を読む
ー目にするものから物語が無限に生まれる!ー
一月二十三日は「私は無精髭だ」と「無精髭」が語る。
周囲にいる知らない人をそっと観察することから、小説は生まれてくる……丸山先生がそんなことを以前言われていたような気がする。
以下引用文からも、無精髭を生やしている人をそっと観察している丸山先生の様子が想像される。丸山先生の眼を通すと、街ですれ違う人の無精髭からもストーリーが無限に生まれてくるのだなあと思った。
彼はさかんに私を撫で回しながら
うちなる何かとのべつ闘い、
あるいは
自分で自分を痛めつける言葉でも探していたのかもしれず、
あるいはまた
私を仮面の代わりにして
まったく別の人間になろうとしていたのかもしれず、
さもなければ
おのれ自身を私のなかへ埋没させて
完全に消し去ろうとしていたのだろうか。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」59ページ)