丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月二十四日を読む
ー与える者へー
一月二十四日は「私は縫いぐるみだ」で始まる。愛犬が老衰のせいで死んでしまった盲目の少女。彼女の哀しみを癒そうと与えられた犬の縫いぐるみが語る。
以下引用文。縫いぐるみは世一のことを「小癪な奴」だと思うが、次の瞬間には……。
不自由な筈の世一が、少女の心を本当に慰めることのできる「生きた本物の仔犬」を渡すのだ。
この世における世一の役割と存在が、弱く、憐れまれる者から、与えることのできる者へと変わる一瞬。その劇的な変換が、「少年は突然奪って 突然与え」という短い繰り返しに表されているようにも思った。
少年は突然奪って
突然与え、
つまり私は
あっという間に彼の手に移ったかと思うと
すぐさま今度は
雪よりも白い
生きた本物の仔犬が少女の手に渡ったのだ。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」64ページ)