丸山健二「千日の瑠璃 終結2」二月六日を読む
ーX線のごとき存在とは?ー
二月六日は「私はX線だ」と世一の身体を調べるX線が、その心までも情け容赦なく調べる。その結果は……以下引用文。
「醜悪な外貌」と対をなす「心の表情」という言葉には、喚起してくるイメージがたっぷりとあって、世一の心の豊かさを思わせてくれる。
「彼の魂は 不可視なものではなく」という箇所に、人間の魂を見通せる光があれば……とも想像する。人間の魂を見通せる存在……なんて嫌だし、煙ったいとは思うけれど、そういう存在が作家なのかも、とも思う。つまりX線は丸山先生自身のことなのかもしれない。
ひっきょう
世一を見かけだけで誤解してはならず、
彼のふた目と見られぬ醜悪な外貌は
断じて心の表情と一致するものではなく、
彼と接する連中の
人間としての程度や真価を試すものでもない。
そして彼の魂は
必ずしも不可視なものではなく
残酷極まりない神に成り代わって
この私がそのことを証明する。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」117ページ)