丸山健二「千日の瑠璃 終結2」三月三十一日を読む
ーひたすら観察ー
三月三十一日は「私は凄みだ」で始まる。
以下引用文。丸山先生を思わせる作家にやくざ者が凄みを放つ瞬間である。
悪趣味とはいえ
それなりのセンスでめかしこんだ
長身痩躯の若いやくざ者が
およそ小説を書くしか能がない男に対して
振り向きざまに放った凄みだ。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」326頁
以下引用文。やくざ者や世一のあとを付け回す作家にやくざ者は「なぜ?」と凄みをきかせて問いかける。
丸山先生は、周囲をよく観察して、観察結果をミックスして書かれるような話をされていたことがある。
こんな風に凄みのある男を観察していたことも、もしかしたら本当にあったのかもしれない。
観察して混ぜ合わせた事実のコラージュを、ご自分の言葉で別の世界に創り出しているのだなあと思う。
すると
窮地に陥ったその中年男は
懸命に作り笑いを浮かべて
自分の仕事がいかに特殊なものであるかを説明し、
とはいえ
けっして詫びたりはせず
二度としないという約束もしなかった。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」328頁)