丸山健二「千日の瑠璃 終結2」四月一日を読む
ー幼な子に壮大な運命を感じる視点ー
四月一日は「私は離乳食だ」で始まる。
「離乳食」が自分を食べている幼な子のことを「まほろ町では最年少の 自立した人間」とも、
「食べることに集中しながら 周辺の動きに周密な観察を加え、いつかきっと役立つ知識として 柔軟性に富んだ脳に しっかりと刻みつけている」とも語る。
以下引用文。離乳食が幼な子に寄せる思いの壮大さに心打たれる。「英名を馳せる者」になるか、「鉄窓に呻く者」になるか、あるいはその両方か。善悪にこだわらずに、人間の運命そのものに興味を持とうとする視点に心惹かれる。
そうやって私をひと口すするたびに
将来において極めて有望な
才覚を具えた者としての
型破りな性格と
そこから派生する運命の展開が形成されてゆき、
もしできることなら
この子の行く末を見届けたいと思う。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」332頁)