さりはま書房徒然日誌2024年6月28日(金)

丸山健二「千日の瑠璃 終結2」四月四日を読む

ー「街道」がただの「街道」でなくなるー

四月四日は「私は街道だ」で始まる。この四月四日はとりわけ好きな箇所である。
「街道」という運ぶとか通行するという機能のためにある存在。それが丸山先生の視点を通して語られると、別の意味を帯びた存在へと揺らぐ。この世界の在り方への丸山先生の思いが、文となって迸るような気がしてくる。

まほろ町と世間を結び
   誤った観念と世人の目を瞞着する情報の数々を
      昼夜分かたずに運びつづける
         獣道が源の古い街道だ。


(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」342頁)

以下引用文。そうした街道を通る様々な人間群像が、全部で十一の姿となって書かれていく。以下はその一部である。通行人の姿を繰り返すことで、この世の多様性が心に響いてくる気がする。

今年初めて陽炎を立ち昇らせた私の上を
   勃々たる野心を姑息な手段によって実現させたがる者が通り
      全財産をすってからやっと故地を訪ねる気持ちになった者が通り、

      別にどうということもない精神的苦痛のせいで
         仏を渇仰してやまぬ者が通り、


(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」342頁)

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