さりはま書房徒然日誌2024年7月1日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結2』四月八日を読む

ーちっぽけな蟻の目がとらえるこの世ー

四月八日は「私は蟻だ」で始まる。

以下引用文。貸しボート屋の親父の頭に登った蟻が目に(?)する風景は、生、勤勉な仲間たち、その仲間が世一に踏み潰されるという不条理……が書かれ、この世の姿が凝縮している文のように思った。

そんな男の頭のてっぺんから遠く沖を見晴らす私は
   薫風にそよいで光るヤナギの若葉にうっとりと見とれ、
      
   ひたすらまばゆい湖面では
      数珠繋ぎにされて出番を待つボートが
         うねりに合わせて揺れ
            互いに擦れ合ってのどかな旋律を奏でていた。


そして地面では
   存在のなんたるかも知らずに
      せわしなく動き回る私の仲間たちが、

      どう頑張っても真っ直ぐに歩けない少年によって
         次から次へと踏み殺されていた。


(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」361頁)

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